ハウとカイのハロウィンナイト
「クッキー1箱、キャンディ1瓶、チョコレート1枚、マラサダ……わー、1ダースは軽く越えてるなー。えーと、20個!? すげー! いっぱいもらえたねー!」
ハロウィンパレードの最終盤、ゲットしたお菓子の内訳を確認して、ハウはほくほく顔だった。仮装も解かずにトリートバスケットをのぞきこんでいるものだから、まるでつまみ食いを狙っているジュナイパーみたいだ。実際、その手はすでにキャンディ瓶のふたに伸びていた。影撃ちを放つジュナイパーさながらの早業で、もうキャンディを1粒取り出したハウは、
「ハッピーハロウィーン!」
にいっと笑ってそれをカイの口に入れた。カイはちょっと不意を突かれながらも、舌の上に広がる甘い味わいと、大好きな人のにこにこ笑顔に頬をゆるめた。
「みんなハウさんがマラサダ好物だって知ってて、用意してくれたんだね。良かったねハウさん。」
「へへー、嬉しいなー。留守番のポケモンたちも楽しみに待ってくれてるだろうし、誰にどのマラサダをあげようかなー。」
こっちの赤いのはブースターで、この大きなマラサダはケケンカニー、とハウはバスケットの中を指差しながら、手持ちポケモンたちの顔をひとつひとつ思い浮かべている。それでもまだマラサダには余りがあった。「食べきれるかな」と心配するカイに、「大丈夫だよー」とハウは答える。
「おれ1度に5個は余裕でいけるもんねー。」
「ふふっ、さすがハウさん。だけどあんまり遅くにお菓子食べると、ハラさんに叱られちゃわない?」
「あっ、そっかー……」
と祖父の制止を思い浮かべかけて、いや、とハウはいたずらっぽく歯を見せた。
「でも今のおれたち、ポケモンだし。」
ジュナイパーの飾り羽を模した胸元の葉っぱの形の布を、ふわりと揺らしてみせる。アシレーヌ姿のカイも、その笑みにつられて髪飾りの真珠をくすくす光らせた。
「じゃあ、今夜はみんなでハロウィンマラサダパーティね!」
「やったー! ハッピーハロウィン!」
2人の声に続けて、一緒にいたカイのジュナイパーとハウのアシレーヌも、嬉しそうに歓声を上げた。