第1幕 アローラでの冒険編

ハウとカイのハロウィンナイト

「クッキー1箱、キャンディ1瓶、チョコレート1枚、マラサダ……わー、1ダースは軽く越えてるなー。えーと、20個!? すげー! いっぱいもらえたねー!」

 ハロウィンパレードの最終盤、ゲットしたお菓子の内訳を確認して、ハウはほくほく顔だった。仮装も解かずにトリートバスケットをのぞきこんでいるものだから、まるでつまみ食いを狙っているジュナイパーみたいだ。実際、その手はすでにキャンディ瓶のふたに伸びていた。影撃ちを放つジュナイパーさながらの早業で、もうキャンディを1粒取り出したハウは、

「ハッピーハロウィーン!」

 にいっと笑ってそれをカイの口に入れた。カイはちょっと不意を突かれながらも、舌の上に広がる甘い味わいと、大好きな人のにこにこ笑顔に頬をゆるめた。

「みんなハウさんがマラサダ好物だって知ってて、用意してくれたんだね。良かったねハウさん。」
「へへー、嬉しいなー。留守番のポケモンたちも楽しみに待ってくれてるだろうし、誰にどのマラサダをあげようかなー。」

 こっちの赤いのはブースターで、この大きなマラサダはケケンカニー、とハウはバスケットの中を指差しながら、手持ちポケモンたちの顔をひとつひとつ思い浮かべている。それでもまだマラサダには余りがあった。「食べきれるかな」と心配するカイに、「大丈夫だよー」とハウは答える。

「おれ1度に5個は余裕でいけるもんねー。」
「ふふっ、さすがハウさん。だけどあんまり遅くにお菓子食べると、ハラさんに叱られちゃわない?」
「あっ、そっかー……」

 と祖父の制止を思い浮かべかけて、いや、とハウはいたずらっぽく歯を見せた。

「でも今のおれたち、ポケモンだし。」

 ジュナイパーの飾り羽を模した胸元の葉っぱの形の布を、ふわりと揺らしてみせる。アシレーヌ姿のカイも、その笑みにつられて髪飾りの真珠をくすくす光らせた。

「じゃあ、今夜はみんなでハロウィンマラサダパーティね!」
「やったー! ハッピーハロウィン!」

 2人の声に続けて、一緒にいたカイのジュナイパーとハウのアシレーヌも、嬉しそうに歓声を上げた。 挿絵:ジュナイパーの仮装をしたハウと、アシレーヌの仮装をしたカイと、ジュナイパーとアシレーヌ。お菓子をくれなきゃZ技しちゃうぞ!